失敗したオンラインRPGを再生させた大胆な決断と信頼回復

世界を一度、閉じた 崩壊を演出し、信頼を“再起動”した再生の三年間

世界中で親しまれてきたロールプレイングゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズの最新オンライン版として、「ファイナルファンタジーXIV」は華々しく登場するはずだった。ところが2010年のサービス開始直後から不具合や遊びにくさが噴出し、ブランドへの信頼は大きく揺らいでしまう。[4] その絶望的な状況から3年後、同じタイトルでありながら中身をほぼすべて作り直した「新生エオルゼア」が発表されると、かつての批判は次第に称賛へと変わっていった。プレイヤーの期待を裏切った作品を、再び「遊びたい世界」に変えることは本当に可能なのか――その問いに向き合った企業の意思決定と実行の軌跡をたどる。

目次

この物語の主役となる企業はどこか

これは、株式会社スクウェア・エニックスの物語。東京都新宿区の新宿イーストサイドスクエアを拠点に、家庭用ゲーム機やPC、スマートフォン向けのゲーム、コミックやグッズまで幅広く手がけるエンターテインメント企業だ。[1] 代表作には「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」など世界的なIPが並び、日本発のRPG文化を牽引してきた存在でもある。なかでもオンラインゲーム事業は、グローバルに長期運営するライブサービス型ビジネスの中核として位置づけられ、その成功と失敗が企業の将来像を左右するようになっていた。「ファイナルファンタジーXIV」は、そのなかで最も象徴的な挑戦となったタイトルである。

何を学べるのか
  1. 大きな失敗を公に認めつつ、既存サービスを維持したまま全面刷新する意思決定の組み立て方と、その社内合意の取り方、リスク説明の工夫
  2. プレイヤーとの対話を前提にした運営体制づくりと、信頼を回復するための継続的なコミュニケーション設計、情報開示のスタイル
  3. 技術基盤とビジネスモデルを同時に作り替え、長期運営型サービスの利益と安定性を両立させる視点と手順を、段階的に実行する方法として丁寧に整理する

どんな問題に直面していたのか

2010年9月、「ファイナルファンタジーXI」の後継と期待されたオンラインRPG「ファイナルファンタジーXIV」はサービスを開始した。しかし完成度の低さや操作性の悪さ、基本的なUIの不備などが指摘され、βテストで寄せられていた改善要望も十分に反映されていないという声が広がっていく。[4] マップ構造は似通った地形が連続し、サーバー負荷を避けるための設計が、結果として世界の広がりや探索の楽しさを損なっていた。月額課金型であるにもかかわらず、遊びづらさのために長くプレイし続ける理由を見いだしにくいタイトルになってしまい、「FFらしさ」への期待と現実のギャップが日に日に大きくなっていった。先行する「XI」の成功体験がかえって思い込みを生み、変化するMMORPG市場の標準からずれてしまった面も否めない。やがて「スクウェア・エニックスはFFXIVで大きな失敗を犯した」という認識が社内外に共有され、ブランドへの信頼は急速に低下する。[4] とはいえ、シリーズの看板タイトルである以上、単純にサービスを終了させるわけにもいかない。運営を続けながら抜本的に立て直すという、前例の乏しい難題が突きつけられていた。

どうやって解決しようとしたのか

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