値上げより先に体験を磨け | 学べる経済メディアへの静かな転身譚

画面の隅に、ひっそりと「値上げ」の二文字が見える。けれど株式会社テレビ東京が恐れたのは、価格そのものよりも、見合う理由が言葉ではなく体験として届かないことだった。ビジネスパーソンは忙しい。記事も動画も飽和し、学びは「したい」から「しなければ」に変わった。そこで問われるのは、情報量ではなく、迷わず辿り着ける導線と、学びが続く仕掛けだ。ライブでは一方通行をやめ、チャットで“つながる”余白もつくる。小さな改善の積み重ねが、信頼を取り戻す近道になると信じて。株式会社テレビ東京は“料金を上げる前に、迷子を減らす”という順序で勝負に出た。[1]
この物語の主役となる企業はどこか
これは、株式会社テレビ東京の物語。関東広域圏の放送局として番組をつくり、ニュースやドラマ、そして経済番組で「今日」を切り取ってきた。けれど視聴者は、決まった時間にテレビの前へ集まらなくなった。株式会社テレビ東京は、放送を守るだけではなく、配信で届け方を増やす道を選ぶ。経済の現場を伝える『WBS』や『ガイアの夜明け』などの資産は、画面の向こうの働く人の背中を押すために再編集され、いつでも開ける棚に並び始めた。グループとして配信ビジネスを柱に据えた。株式会社テレビ東京は「番組」を「日々の道具」へ変えることで、視聴の時間割そのものを書き換えようとした。[2][6]
- 値上げの前に“体験”を整える順序が、価格の議論を信頼の議論へ変え、改定を自然にし確度を上げる
- 学び需要を「番組」から「習慣」へ翻訳し、トップページ刷新・検索・特集・連載・カテゴリ整理で“見つかる棚”を先に固定して迷いを削り、隙間時間に刺す
- 無料で入口を広げつつ、有料ではライブのチャットや学習プログラム、資料ダウンロードで“つながる深さ”を作り、継続の理由を言語化して離脱を抑える
どんな問題に直面していたのか
課題は二つ重なっていた。一つは、情報の洪水のなかで「見たい」を見つけてもらう難しさだ。株式会社テレビ東京の経済動画は、2012年10月から積み上げたアーカイブが厚く、2021年には会員数約10万人の有料サービスとニュースサイトを統合して「テレ東BIZ」を再起動した。[2] しかし、棚が大きいほど迷子も増える。検索や特集が弱ければ、良い動画ほど埋もれ、学びが続かない。もう一つは、価値の説明責任だ。2024年、テレ東BIZは12年目に入り、月額550円(税込)という“優しい価格”のまま走っていた。[1] けれど制作コストや人材投資は増え、競合は学習機能やコミュニティを先に実装していた。加えて入口はテレビからスマホ、CTVへ移り、推薦が偶然を支配し始めた。TVerの月間再生数は2024年12月に4.96億回、CTVで1.6億回に達し、配信が本線になりつつある。[5] この流れに乗るには、毎日戻ってくる確かな理由が要る。放置すれば、価格は安いのに満足が低いという最悪の誤解が残る。株式会社テレビ東京は「安さ」を武器にするほど、体験の粗が目立つという矛盾に直面していた。[1][2]
どうやって解決しようとしたのか
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