現場が回り出す、数字の習慣化で意思決定が速くなる

見る数字を減らせ 数字の習慣化で意思決定が加速する

数字が見えるだけでは、人は動かない。それを知っている企業ほど、ダッシュボードを開かなくなる。そんな停滞に、ある会社は別の答えを持ち込んだ。売るのは、分析結果ではない。現場が数字を眺め、理由を分け、次の一手を決めて、また振り返る――その反復の型だ。株式会社キーエンスが、データ活用を“現場の習慣”へ変える新規事業に踏み出した瞬間、物語は動いた。[3]変化の主役は機能ではない。毎週の会議で、同じ指標を同じ粒度で語れるようになること。その地味な勝負が、やがて意思決定の速度を変えていく。その一歩は小さい。だが戻れない。数字が回り出すと、組織の会話が変わり、決断が軽くなる。

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この物語の主役となる企業はどこか

これは、株式会社キーエンスの物語。工場の自動化(FA=ファクトリーオートメーション)を支えるセンサや測定器、画像処理装置などで知られ、提案型の直販モデルを磨いてきた。[1]年次報告書では、約110カ国で35万社の顧客に貢献するとし、現場の課題を拾い上げる幅の広さを示している。[1]一方で、同社の強みは「モノ」だけにとどまらない。高い収益性と健全な財務を背景に、次の打ち手へ投資できる体力もある。[2]そしてある日、社内で育てたデータ活用の型を、外の現場へ届ける挑戦を始めた。[3]舞台はオフィスではなく現場だ。製造業の現場理解を武器に、データ活用を“習慣”として設計し直した点が、この物語の核心になる。

何を学べるのか
  1. 定着は機能ではなく更新頻度で決まり、会議の速度を左右する
  2. 評価軸を先に決め、3〜5指標に絞って、原因と打ち手を同じ言葉で語れるようにする。見る数字が減るほど、議論の摩擦が減り、次が早い。迷いが減る
  3. 伴走は期限と卒業条件を置き、最初の成功体験を作ってから部門へ横展開する。更新担当と例外対応を明文化し、止まった時の戻し方まで用意する。小さく始める

どんな問題に直面していたのか

製造業の現場には、意思決定の瞬間がいくつもある。生産計画、歩留まり、品質、納期、保全。だが現実には、数字は散らばり、更新は止まり、会議は「体感」に戻っていく。表計算ソフトの帳票が増え、指標は足し算され、誰も全体像を語れなくなる。分析担当は忙殺され、現場は「頼んでも遅い」と学習する。そこで起きるのは、改善の遅れだけではない。原因が曖昧なまま手当たり次第に打ち手を増やし、現場は疲弊する。さらに、担当が替わると運用が断絶し、同じ議論が毎年繰り返される。放置すれば、意思決定は遅くなり、競争力の差は静かに広がっていく。問題はデータの不足ではなく、データが“習慣”になっていないことだった。

どうやって解決しようとしたのか

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