地図を描き替え、巨大組織が速さを取り戻す47エリア再編の決断

巨大組織を刻む覚悟 47つのエリア責任で在庫と信用を守る判断

2024年1月1日、株式会社ブリヂストンは世界を二つに割り、47の現場へ責任を渡した。[1] タイヤという“重い産業”が、軽やかさを必要とする時代に入ったからだ。原材料も物流も、為替も需要も、毎週のように顔つきを変える。遅れた判断は、在庫ではなく信用を積み上げてしまう。資本効率をROIC(投下資本利益率)で測り、経営・業務品質を磨くという24MBPの言葉は、静かに重い。[2] 価値の軸にはE8コミットメントを置き、何を守り、何を変えるかを迷わないようにした。[3] 地図を描き替える痛みが、次の十年を決める。これは、速さを取り戻すために、巨大組織が自分の骨格を削り直した物語だ。[1]

目次

この物語の主役となる企業はどこか

これは、株式会社ブリヂストンの物語。1931年創業のタイヤメーカーとして知られ、いまはタイヤを核に、モビリティの価値を広げようとしている。タイヤは安全と燃費と静粛性を握る“最後の接点”で、品質の差は運転者の体感に直結する。一方で市場は、地域ごとの規制や気候、道路事情で分断され、同じ成功が同じ形では再現しにくい。2024年から、世界の実行単位は47エリアとなり、上位に2リージョンと6SBUが置かれた。[1]役割の線引きが、物語の舞台装置になる。その狙いは、遅さと戦うこと。守るべき価値をE8で掲げたうえで、守り方の仕組みを更新した。[3]

何を学べるのか
  1. 市場が揺れるほど、現場の“異変”は会議資料の平均値に溶ける。情報の鮮度を守るため、責任の単位を切り直す視点を学ぶ
  2. ROIC(投下資本利益率)など資本効率KPIを共通言語にすると、投資・撤退・価格の議論が同じ机で進み、迷いが減って判断が速くなる理由を押さえる
  3. 分権は自由では終わらない。リージョンで資本配分を統治し、監査で歯止めをかけ、勝ち筋を標準化して横展開する勘所と手順を整理するまで

どんな問題に直面していたのか

2023年、株式会社ブリヂストンは数字の前で立ち止まった。調整後営業利益率は11.1%、ROICは8.7%。悪くはないが、世界が変わる速度には追いつけない、と自分たちが判断した。[2] 背景には、原材料価格や物流の変動、インフレによる消費の揺れ、各国で進む環境規制など、外部の波が重なっていた。タイヤは“作れば売れる”商品ではなくなり、プレミアム化、サービス化、そして地域別の最適化が同時に求められる。原因は単純なコストではない。地域ごとに需要も競争も違うのに、判断が会議を経て平均化され、現場の異変が“資料の過去形”になっていく。新しいサービスやソリューションにも挑んだが、やることが増えるほど、止める決断は遅くなる。責任が曖昧なままでは、撤退も集中もできない。そこで24MBPは、残課題を2024年中に解き切ると期限を置き、経営・業務品質の改善に舵を切った。[2] このままでは、投資が分散し、価格も供給も後手に回り、資本効率の改善が鈍る。地図はまだ古いままだ。だからだ。同社に突きつけられた課題は、世界を一枚で見る癖を捨て、現場の事実から動ける速度を取り戻すことだった。[1]

どうやって解決しようとしたのか

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