安心の象徴である鍵が裏切る、4年におよぶ貸金庫の窃盗

貸金庫での窃盗 静かな業務が大事故へ変わる因果線

鍵は、安心の象徴だ。銀行の貸金庫は、その象徴を最も濃く抱える。2024年、株式会社三菱UFJ銀行で元行員による貸金庫の窃取が明るみに出た。公表は2024年11月22日、続報も重ねて出された。[2] 行為の期間は2020年4月から2024年10月。舞台は練馬支店(旧江古田支店を含む)と玉川支店だった。[2] 被害は十数億円規模、対象契約者は千人単位とされ、胸の奥の体温が下がる数字が並ぶ。[2] 手続はあった。封緘も、点検も。なのに、穴は空いた。しかも長くも。本稿は、失敗の因果を追い、組織が何を選び、何を代償にしたのかを描く。信頼は、失う瞬間だけ速く、取り戻す工程だけ長い。[2]

目次

この物語の主役となる企業はどこか

これは、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの物語。巨大な金融の器は、日々、無数の「預かりもの」を抱えながら回る。預金、融資、決済、そして、声に出して数えにくい顧客の秘密。貸金庫はその最奥にある。店舗の奥、壁の内側、静かな部屋。そこに預けられるのは、現金や貴金属だけではない。遺言の下書き、契約書、家族の記憶。だからこそ、この出来事は「損失」では終わらない。支店の一室で起きたことが、グループの看板にまで火を移す。信用を扱う企業は、信用の破綻でもっとも深く傷つく。[4]

何を学べるのか
  1. 静かな業務ほど、権限集中と例外運用が長期化しやすいこと
  2. 点検を「作業」から「異常検知」に変える具体の着眼点
  3. 事故後に信頼を戻すには、補償と再発防止を同時に進める必要があること

どんな問題に直面していたのか

貸金庫は、現金や貴金属、有価証券、契約書類などを「人の目から離して」預ける場所だ。[1] その安心は、厚い扉よりも、運用の細部で守られている。株式会社三菱UFJ銀行のケースでは、元行員が貸金庫から金品を窃取したとされる。[2] 行為は2020年4月から2024年10月に及び、発覚は2024年10月31日。対象は練馬支店(旧江古田支店を含む)と玉川支店で、契約者の申告などを通じて被害の輪郭が広がっていった。[2] 銀行側は行為者を懲戒解雇し、警察へ相談・届け出も行った。[2] だが、顧客側から見れば、ここが恐ろしい。預けたこと自体が「秘匿」であるほど、確認も申告も遅れる。しかも貸金庫は頻度が低い。低頻度業務は、牽制が薄まると例外が積もりやすい。「静かな業務」は、発見が遅れる分だけ被害が肥大化する。[2]

どうやって解決しようとしたのか

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