スマホ画面から始まるお金との付き合いの再発明エムットの舞台裏

スマホが財布になる 銀行・カード・証券がひとつになる

金利がほとんど付かなかった時代が終わり、物価も給与も少しずつ動き始めた頃、人々のお金との距離感はむしろ遠のいていました。投資もポイントもQR決済も、選択肢だけは増えていくのに、「どこから始めればいいのか分からない」という声が、株式会社三菱UFJ銀行の窓口やコールセンターに静かに積もっていきます。フィンテック企業は軽やかなUIと分かりやすいメッセージで次々と新サービスを打ち出す一方、メガバンクのアプリは「残高を見るためだけの道具」として扱われがちでした。日々のスマホ画面そのものを「金融との入口」に変えてしまうという発想は、そんな閉塞感の裏側から生まれた静かな反逆でもあったのです。 その一歩として立ち上がったのが、銀行・カード・証券をまたいで「お金のあれこれ、まるっと。」を掲げる新サービスブランド「エムット」。本稿は、その構想から初期成果が見え始めるまでの物語です。[1][2]

目次

この物語の主役となる企業はどこか

これは、株式会社三菱UFJ銀行の物語。日本最大級のメガバンクである同社は、個人預金約93兆円、約3,400万の個人預金口座という圧倒的な基盤を持ち、日本全国の生活と企業活動を支える金融インフラの中核を担っています。[1] 店舗やATMに加え、インターネットバンキングの「三菱UFJ銀行アプリ」は1,000万超の利用者を抱え、給与振込や公共料金、ネットショッピングの決済など、暮らしのあらゆるシーンで裏方として機能してきました。[1][5] しかし、グループにはカード会社や証券会社、投資信託、デジタルペイメントなど多様なサービスが存在するにもかかわらず、生活者にはその全体像が分かりにくく、バラバラのブランドとして認識されている側面もありました。[2][5] 巨大な顧客基盤と多様な商品を「ひとつの体験」として束ねられるかどうかが、株式会社三菱UFJ銀行にとって次の成長と信頼の試金石になっていたのです。

何を学べるのか
  1. 金融サービスをばらばらに提供するのではなく、サービスブランドとアプリを軸に「体験」を再設計する発想の重要性と、その始め方
  2. 巨大組織であっても、少数の顧客シナリオに絞り込み、KPIと顧客の行動変化で成果を測るリテール戦略の組み立て方と、その落とし穴
  3. AIやチャットボットを単なる効率化の道具ではなく、「最初の一歩を踏み出す不安」を減らす顧客体験として設計する視点と、その実装の勘所

どんな問題に直面していたのか

株式会社三菱UFJ銀行が直面していたのは、「預金は集まっているのに、お客さまのお金の行動が自社グループの外で完結してしまう」というジレンマでした。日々の支払いはQR決済アプリ、投資はネット証券、ポイントは別の経済圏で管理され、銀行アプリは給与が入ったかどうかを確認するだけの存在になりつつあったのです。[2][5] その結果、グループとしては豊富な商品とサービスを持っているにもかかわらず、「この銀行と付き合うことで、生活や将来がどう良くなるのか」がお客さまに伝わりにくい構造が生まれていました。低金利から「金利ある世界」へと環境が変わり、個人の資産形成ニーズが高まるなかで、資産運用ビジネスの競争は激化し、フィンテック企業やネット証券、ネット専業銀行が新しい顧客体験を武器にシェアを伸ばしていきます。[1][4][5] このままでは、メガバンクであっても「送金と入出金だけのインフラ」に押し込められ、付加価値の高い領域から徐々に存在感を失いかねないという危機感が、経営と現場の双方で共有されていったのです。

どうやって解決しようとしたのか

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