巨額買収の後で、負債と統合の三つ巴を越え資産売却で投資を守る

買収が完了した日、世界は拍手を送った。だが企業の胸の内では、別の音が鳴っていた。返済の期限、統合の摩擦、そして研究開発の火を消せない焦り。追い風もある。統合が進めば、規模は武器になる。けれど足元が重ければ、武器は振れない。大きな船ほど、方向転換には時間がかかる。だからこそ、早く軽くなる必要があった。勝負は買収そのものではなく、買収後に資本配分で未来を守れるかに移っていた。
目次
この物語の主役となる企業はどこか
これは、武田薬品工業株式会社の物語。日本発の製薬企業として、消化器系や希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジーなどで世界の患者さんに薬を届けてきた。研究開発は長距離走で、規制対応と品質の積み重ねが信頼の土台になる。だから、目先の数字だけで舵を切れない。そんな性格の企業が、Shire plc買収で一気に世界の海へ出た。「止められない投資」を抱えたまま、財務の重さをどう扱うかが、この企業の強さを試した。
何を学べるのか
- 大きな意思決定は、評価軸を先に固定すると迷いが減る
- 「守る線」を宣言すると、現場の行動が同じ方向に揃う
- 売却や統合は“速度”を指標化すると、実行が続く
どんな問題に直面していたのか
買収完了は祝杯ではなく、請求書の束の始まりだった。[1]武田薬品工業株式会社は、Shire plcを抱えた瞬間から、巨額の負債と向き合うことになる。投資適格格付の維持を意識しながら資金調達も組んでいたが、視線は冷たい。[1]純有利子負債/調整後EBITDA倍率を数年で引き下げられなければ、調達コストは上がり、研究開発の自由度が削られる。しかも目標は具体的だった。2021〜2023年度に同倍率を2倍水準へ下げる――時間は短い。[3]さらに、キャッシュ創出は為替や市況で揺れ、読み切れない。しかし製薬は、リストラで終わる事業ではない。供給と品質は生命線で、規制当局の要求は待ってくれない。負債削減、統合のスピード、研究開発の継続という三つ巴を同時に満たすことが、最大の難題だった。
どうやって解決しようとしたのか
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